EOS旧デジの現像・色調整法

かねてよりご要望を頂いていたEOS旧デジのRAWファイル現像についてご紹介する。
初めにお断りしておくが、まずDPPだけでは画像を完成することはできない。なぜかと言うとDPPには特定の色域ごとの色相や彩度コントロールするコマンドを持っていない。発色の良いEOS旧デジを生かすためにはこのコントロールが不可欠だ。なのでプラスPhotoshopを使用する事を前提としてご覧頂きたい。

ならPhotoshopで現像すれば?と言われそうだが、あいにく私のはCS以前のv.7。私はv.2からのユーザーだが画像処理の基本部分はv.4〜5位で完成、後はv.6でカラマネ完全対応になった位のもので以降はRAW現像やフィルタ関係またその他付加機能の充実だと認識している。少なくとも、ここがこういう風に出来ればいいのになぁ、というのを思わないので使い続けている、という訳だ。

現在のACRに付いては、NRやビネットコントロールなど以外に、画質の重要な要素であるダイナミックレンジが広がるらしいのだが、色彩・精鋭度を伴ったレンジ拡張が可能なら一度使ってみたい。

色補正処理の基本であるトーンカーブ、各色域毎の色相・彩度操作についてが今回の話の中心なので、総合的な調整が可能なDPP以外の現像ソフトをご使用の方も十分参考になると思う。

特定色域の操作については、ピクチャースタイル・エディタで可能といえば可能なのだが、、、。実際に使ってみた感想は・・・、1つの場面に合う設定ができたとしても他の場面にはぴったりとは合わない。それでもう1パターン、もう1つと、天候や時刻や被写体毎にオリジナルのピクチャースタイルが増えていく。photoshopの色相・彩度操作に慣れた方なら時間の浪費だとすぐ気が付くだろう。

それでは1Dsと以前なかよし さんにお借りした1Dの画像を使い現像・補正設定を順を追って。まずDPPでRAWを開け、ピクスタ(忠実設定)と色温度(5300k)のみを決定したのが下の状態。

掲載画像(設定画面含む)は画面クリックですべて拡大別画面表示します。

 

DPP、ピクチャースタイルと色温度のみを決定した状態

1Ds

1D

この状態でも1Dsはそこそこバランスがとれているが1Dはかなり青くシアンが被った状態だ。これだけを観ると「1Dの画質は解像度以外はトップである」という私の発言はにわかに信じ難いかもしれない。しかしこのページを最後までご覧頂くと理解できるはず。
それとピクスタが何故“忠実設定”なのかについて少し説明しておこう。“忠実設定”はピクチャースタイルという呼び名が付けられていないDPPv1.x(私の知る限りではv1.6)から存在するもので、種類が増えた現在のピクスタすべての発色は、実はこの“忠実設定”が元になる。つまり“スタンダード”をはじめ“ポートレート”“風景”“ニュートラル”などは、トーンカーブとphotoshopなどでの色相・彩度操作で全て作ることができる。すなわち“忠実設定”を元にすべてのピクスタは出来ているという訳だ。
今回はDPPv2.0を使用。一時私が好んで使用していたv1.6は、v.2.xより発色や部分的な解像性は勝るものの、偽色や飽和色に対する対策が発展途上で、その性格を理解した上で使いこなさないと良い結果に繋がらないので避けることにした。またv.3からは現在のEOSデジの特性に合わせているのか、無駄に彩度が高いのでこれも避けることに。どうやらEOS旧デジのRAW現像はv.2.xが最も安定した結果を得られるように思う。

さて、ここからが本番。まずDPPでトーンカーブを適用したところが下の画像だ。

DPP、トーンカーブを適用した状態

1Ds

1D

1Ds・1D、それぞれの設定は下の通り。

DPP、1Dsの現像設定

DPPの作業カラースペースはAdobeRGB、掲載用はPhotoshopでsRGBに変換しています。
またPC画面のキャプチャはモニタプロファイルからsRGBに変換しています。

トーンカーブRGB全体で大まかなコントラストを整えた後、ハイライトのYを抜く、つまりBチャンネルの数値を画像の調子を観ながら上げる。シャドー側は、この画像では少し下げているが必ずそうなる訳ではない。
忠実設定の赤は少しマゼンダよりである。なのでBチャンネルの操作により赤系の色が更にマゼンダっぽくなる場合があるが、これはphotoshopで色相を動かせばよい。
このように1Dsのトーンカーブ操作はRGB全体とBチャンネルのみを動かす事が基本になる。但しハイライト・シャドーを更に追い込む場合や、特定の色がメインの被写体(例えばピンク=梅や桜)の場合はR・Gチャンネルを調整する場合がある。
この状態でなんとなくメリハリが付かない場合は、トーンカーブRGB全体で、色が濁ったり紫っぽくなる場合はBチャンネルの操作を繰り返す。また全体として寒色になれば設定色温度を上げ、暖色になれば下げて調整する。R・Gチャンネルを操作すれば、色温度の設定数値がアバウトであっても問題なく仕上げられるばかりでなく、ハイライトとシャドーに結果として異なる色温度を当てはめた色をつくる事ができる(実際風景写真では多用する)が、とりあえずは基本編という事で、まずはコントラストの付け方と色の濁りを取る操作感覚を掴んで頂きたい。

次に1Dの設定。

DPP、1Dの現像設定

1Dの場合は、1Ds同様トーンカーブRGB全体で大まかなコントラストを整えた後、Bチャンネルの操作でハイライトのYを抜く前に、Rチャンネルを上のように下げシアン被りを解消する必要がある。
また1Ds同様、赤系の色がマゼンダ寄りになるのに加え、空などブルー系の色は赤みが少なくシアン寄りになるがこれで正解。後はphotoshopの色相・彩度コマンドで操作する。
ピクスタに“忠実設定”ではなく“スタンダード”や“ニュートラル”を選べば、赤味の少ないブルーやマゼンダ寄りの赤にはならないが、色飽和の早さや濁りの取れないシャドーに悩む事になる。このピクスタの正体については後日詳しくお伝えする。

さて次にphotoshopで色相・彩度操作を加えたものが下の画像。

Photoshopで色相・彩度操作を施した仕上がり例1

1Ds

1D

とりあえず簡単に仕上げるとこんな絵になる。まずは彩度を控えめに。

それぞれの設定は下の通り。あくまで一例なのでさじ加減は好みに応じて加減して頂きたい。

Photoshopでの色相・彩度設定1

1Ds

1D

次に彩度を高めに仕上げた例。

Photoshopで色相・彩度操作を施した仕上がり例2

1Ds

1D

それぞれの設定は下の通り。

Photoshopでの色相・彩度設定2

1Ds

1D

これらの設定はあくまで私の感覚と好みでやっているので、いろいろ試してみてほしい。上の色相・彩度コマンドの注意点を少し。1Ds・1Dとも赤領域は色相を黄色方向へ振っているが、その変化のしきい値に注目。オレンジ色付近は、より黄色へ変化しない様に値を基準値から変更している。変えたい色、変えたくない色を見極めるのもポイントだ。

次に実践例をご紹介する。DPPトーンカーブは上の例の通りRGB全体とBをまず調整するのだか、前記した通りGとRも微調整しないとバランスしないケースだ。

ピクセル等倍(4,064×2,704 px)

DPPの設定は下の通り。

RGB全体カーブ、シャドー部の出っ張りは、少し霞み掛かった背景の山の濃さ・コントラストを出すため。ここからシャドー部へ向かう途中の谷は、ディープシャドー部のコントラスト確保のためだ。
Bチャンネルはイエロー・ブルー(透明感)の操作、Gチャンネルはマゼンダ・グリーン、Rチャンネルはレッド・シアンの操作だ。
どうも桜を撮った写真はGチャンネルでMを抜きたくなる。この作例の場合、シャドー側との両立を考慮して決定した現像色温度5300Kが日向部分には少々高い事や、赤がM方向に発食する忠実設定だから、の両方に起因すると思うが今のところ不明。近くの山が少し霞んでいたものを、感覚的な記憶色に近付けようとするからかもしれない。まあ結果良ければそれで良し。

次にphotoshopでの色調操作。色相・彩度操作が先で微調整のトーンカーブ操作が後。

今回は実践例を揚げてEOS旧デジの色だし法について簡単に書いた。中でもトーンカーブに付いては加法混色(RGB)を理解した上で、まだ使っていない方もぜひ挑戦してみてほしい。
1Dsを使いだしてから感じるのは、高感度ローノイズ型の現在の機種に比べ(20D・5Dを使用した経験から)このトーンカーブ操作による色調整が非情に楽になったことだ。現在の機種では上の作例のような透明感はまず出ないし、紹介した補正設定は当てはまらない。ギラギラのハイライトと濁ってヘロヘロのシャドーになる。
EOS旧デジは、トーンカーブや色相・彩度操作を正しく加えることによってどんどん良くなる。

次回はD60も含めて更に実践的なシーンでの色出し例などを紹介したいと思う。(いつもの様に気が変わるかもしれませんが、まあ気長にお待ちください)

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