バランスのよい印刷が上がる条件
(印刷会社との会見報告)

どうすればきれいな印刷が上がるのか。またなぜ印刷の色に関するトラブルが多いのか。そしてカメラマン、デザイナー、製版・印刷会社まで一貫したCMSは可能なのか。私は、自分のプロファイルを運用してくれる印刷会社に出会った事で、とりあえず意図通りの色で印刷が上がる様になった。しかしこれは自分の仕事という狭い範囲での事であって、これを広めていこうとすれば製版・印刷工程までさらに詳しく知る必要がある。そう考えた私は、とりあえず現在私が印刷をお願いしている印刷会社に詳しくお話しを伺った。

話を伺ったのはその会社の専務で自ら現場の指揮を取り、営業にも飛び回るA氏だ。もちろん取り次ぎ形態のブローカーさんではなく、製版から刷りまでをトータルに受注されいる比較的小規模な印刷会社だ。印刷方式はDDCP(プリンタ校正)+CTPでの運用が基本だ。A氏は社長の息子さんで実質的には営業・現場すべての責任者という立場。JAMP(雑誌広告基準カラー)の運用やプロファイル、それに昨今のデジ一眼についても非常に詳しい。この会見で私が常々印刷に関して疑問に思っていた事のほとんどが解消された。あーすっきり。

前置きはこれ位にして、その内容をQ&A形式で簡潔にお伝えする。Qは私、AはA氏である。

Q1
いままで他社でうまく上がらなかった色が、どうして貴社だと私の意図通り印刷できるのですか?

A1
私の会社では、製版から印刷までを一貫してやっていますから、自社の印刷に適した(ベタ濃度、ゲイン)製版をし印刷するからです。まれにある刷りだけの受注の場合も必ず製版担当の会社と数値でルールを決め、その基準を満たしていないものは責任が持てないので、やり直してもらいます。もちろん印刷も自社基準を設けそれを守っています。他社でうまく上がらなかったのは、ほとんどの製版会社、印刷会社に厳密な基準がありません。互いの数値的なルールが無いため、製版で数値が崩れ、印刷でまた崩れる。うまく上がる方が不思議です。ですから当社はほとんどが自社製版です。メンテは少し手間が掛かりますが、これさえきっちりやっていれば品質は安定します。

Q2
CMYKプロファイルについてですが、私が使用しているプロファイルは問題ないのでしょうか。また貴社にとってはどのプロファイルを使用して分解するのがいいのでしょうか?

A2
厳密に言えば、プロファイルは写真1点1点写っているものを見た上で決めるのが理想ですが、あまり神経質にならならいでいいと思います。現実的にはベタ濃度(インキの総使用量)は300%あれば十分ですから、それを少し越えた位(310〜330%程度)です。photoshopではJPstdv2でとりあえずOKです。それよりも元画像が適正に補正されているか(グレーバランス、レンジの事)の方が重要です。これが出来ない方はカラージーニアスやfujiのピクチューンなどで補正・分解されてはいかがですか。しかしphotoshopでトーンカーブなどRGB段階で適正な処理のできる方は必要ありません。但しモニタのキャリブレーションは必須です。

Q3
バランスの悪い画像(RGB、CMYK共)に対してはどう対処されていますか。

Q3
こちらで補正(有料)しますが、CMYKになってからでは失われる色があったりと、どうしようもないケースもあります。基本はRGB段階で補正するのがベストです。

Q4
昨今の一眼レフタイプのデジカメの画像についてはどうでしょうか?

A4
全く問題はありません。但し、個々のCCDの特性やキャパ(発色やどれ位の大きさまで使用できるかなど)は熟知しておかなければなりません。

ざっとこんな感じである。その後話はRGB、CMYKのガモット(再現色域)やデルタE(品質誤差測定値基準)にまで及んだ。とにかくこんな詳しい方にお会いしたのは初めてだ。プロファイルに関して補足しておくが、RGBは当然としてCMYKに関しても結果的には自社のプロファイルに添って変換するものの、意志の疎通(どんな色を想定して分解したか)を図るためには必要だという見解だった。そしてなによりも印象的だったのは「別に当社は変わった事はしていません。印刷屋として当たり前の事を普通にやっているだけ」という言葉だ。それとプロファイル云々よりも画像そのもののバランス(グレー、レンジなど総合的な)が最も重要だという事。最後にA氏は「色にうるさい仕事をとってきてくださいよ(笑)」

以上、いかがだろうか。とりあえずバランスのよい印刷が仕上がるまでのメカニズムはほとんど解明された様に思う。後はこれを実際のワークフローにどう組み込むかが問題だ。話を総合すると、濃度管理が整っている印刷会社へ発注した場合、画像の印刷仕上がりは補正した人間で決まる。バランスのよい画像処理が出来ても、いい加減な管理態勢の印刷会社へ発注すれば色は崩れる。これは私が今まで経験した事からも事実だと思う。従って実際のワークフローに於いては、印刷が解かる色の管理者が必要だという事。現状に問題があると感じるならば、この役割を担う人間を必ず組み込む事。現時点での答はこんなところだろうか。
まだまだ不十分な点もあるので、更に追求していきたい。

尚、会見は約1時間半に渡ったので、この中には書き切れてない事もたくさんある。私の言葉が足りない部分もあるかもしれないので突っ込みは掲示板の方へ。

つづく

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